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「僕は俳優さんの大きな芝居を見るのが楽しい」−− 中島哲也
「作り物の世界なんだから大嘘つくならしっかり大嘘をつけ」−− 役所広司


『パコと魔法の絵本』は04年に公演された後藤ひろひと作の舞台『MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人』を映画化したもの。一代で会社を築き、ワンマンで生きてきた大貫と少女パコとの交流を軸にした本作は、舞台版よりも舞台っぽく、舞台版よりもファンタスティックにしつつ舞台とは違う着地点に仕上がった。映画の成り立ちについて中島哲也監督と主演の役所広司に語ってもらった。

「大貫役には役所さんしか浮かばなかった」(中島哲也)

パコ

 偏屈なワガママジジイの大貫と、一日しか記憶の残らない少女・パコとの交流を軸にした『パコと魔法の絵本』は、爆笑して号泣できる感動エンターテインメント。天才の名を欲しいままにする中島哲也の最新作だ。メインキャラクターの大貫を演じるのは、日本を代表する俳優・役所広司。中島監督の頭には最初から、大貫を演じるのは役所広司しかいないという思いがあったという。

中島「実はもともと『MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人』と、その前に後藤ひろひとさんが書かれた『人間風車』という舞台は観に行ってまして、こういうのを映画にすれば面白いと思っていたんですよ。そうしたら別のところで『〜ガマ王子VSザリガニ魔人』を映画にする話が進んでいて。で、まだ監督が決まっていないというから、立候補して。それでスッと決まったんです(笑)」

役所「舞台版では映画でいうと妻夫木聡さんと土屋アンナさんが演じた室町とタマ子が話のメインになっていましたよね」

中島「どう考えても役所さんが演じられた大貫と、交通事故の後遺症で1日しか記憶をとどめておけず、毎日同じ絵本を読んでいるパコが中心の話だと思ってましたし、2人に影響を受けて周囲の連中が変わっていくようにしたほうがいいと思いました。そのほうがシンプルになり、強く言いたい事が伝わると。そして脚本を書いている時点で、大貫役には役所さんしか浮かばなかったんです。普段はキャスティングをしている時に俳優さんを誰にしようかとか、僕はなるべく考えないようにしているんですが。だからプロデューサーにも相当に早い時期から役所さんに出演を依頼してほしいと言ってたんですよ」

役所「光栄です(笑)」

ーーそこまで思った役所さんの魅力は?

中島「役所さんといえば日本映画の中心的存在。そういう人に自分がやるメチャクチャな話をやってほしいという思いもあったのかもしれない。あと顔が怖いというのも魅力で」

役所「顔が怖い!? あっはっは!」

中島「全体的に舞台的なメイクを施すとか、そういうのはもう最初から決めていたので、大貫は老人の役ですがお若い方にやってもらったほうがいいだろうと思っていたんです。でも若い世代の俳優さんは皆、顔が優しすぎる。主役をはれてしかも顔が怖いというのは役所さんが最後の世代じゃないかと。怖いパーツでできている中で、ほんの少し優しさが浮かぶのがいいんですよ」

役所「僕はまず役柄よりも中島さんがこの作品を映画にすることに興味があったんです。中島さんとは横浜映画祭でお会いしてちょっとお話をさせていただいたことがあるくらいだったんですが、初めてお会いした時にこの人があのぶっ飛んだ『下妻物語』を撮った方なんだと驚いて(笑)。さらに中島さんがあのCMもこのCMも撮っていたのかと知って驚いて。だからすごく今回もどう作られていくのか興味深かったですね」

「あの扮装をしたら自分ではないので 何でもできる(笑)」(役所広司)

パコ

『パコと魔法の絵本』ではオトギ話の世界のようなセットが作り込まれ、誰が誰だか分からないくらいの奇抜なメイクと衣装が役者たちに施されている。それが生み出す演出上の効果とは、そこで演じる役者の芝居とは、如何なるものなのだろう。

役所「最初に監督の描いたキャラクターのイメージ画を観て、こんな姿になれるのか!? と思いました(笑)。衣装やメイクがすごかったから。でも出てきただけでこんなヤツだというのがわかるから助けられました」

中島「キャラクターをメイクと衣装で記号として皆に与えることで、それ以上説明する必要がないんですよね」

役所「だから2時間半の舞台を1時間45分にスピーディにまとめても理解できるんです。またあの扮装をしたら自分ではないので何でもできると(笑)。全員そんな感じでした」

中島「改めてメイクで俳優さんの芝居を限定することはないんだってことが今回わかったんです。例えば大貫の髪形は面白いけどずっと観ていたら飽きるから自然と役所さんの目を見る。結果、大貫がパコをどう見て、その眼差しがどう変化していくのか、特に今回は人に対する視線の変化が大事だったから、そこをより特化して描くことができた気がします」

役所「またあの扮装をし、あれだけのセットの中に入るとリアルな芝居がすごく小さく感じられますよね。逆にああいうメイクにより自由に演じられる部分もできたというか」

中島「本当に皆さんリアリズムに囚われることなく、自分の感情を自在に表現していたからのびのびしてました(笑)。僕はああいう俳優さんの大きな芝居を見るのが楽しいんですよ。だからこういう機会を作りたかった」

役所「妙なリアリティなんてくそ喰らえ! みたいな力強さがありますよね、監督の作品は。今のリアリティ重視の流れに監督は何かを投げかけているんだなと。どうせ作り物の世界なんだから大嘘つくならしっかり大嘘をつけと。そういうのを僕も体験させてもらいました。とにかく喜びがありましたよね。お芝居をしているという面白さが。これでやりすぎだったり下品になったりすると大変なことになるけれど、上品に仕上がっていたので、それはもう中島さんのセンスなんでしょうけど。何か不思議な感じでしたね、仕上がったのを観た時は。あとは品の良い役者が集まったってことかな(笑)」

中島「本当に俳優さんたちを見せる映画だったなと思いますね。でもこれはうまい俳優さん同士だから成立したこと。だから今回は中島どうした!? っていうくらいに現場で怒鳴らなかった(笑)。本当に僕にとっても幸福な楽しい撮影だったんですよ」

オトギ話から抜け出してきたようなポップでカラフルなセット、奇抜なメイクと衣装を施し童心に帰ったようにノビノビと演じる豪華キャスト、少女・パコの天使のようなかわいらしさ、3DのフルCGを駆使した映像表現、などなど見所の多い本作。この魔法がかかったような奇跡の感動ストーリーは、あなたの心をほっこりと温かくさせてくれるはずだ。

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写真:小山裕良 PHOTO by HIROYOSHI KOYAMA
取材・文:横森 文 TEXT by AYA YOKOMORI
ヘアメイク:田中マリ子(役所広司) HAIR & MAKE by MARIKO TANAKA
スタイリング:真島京子(役所広司) STYLING by KYOKO MAJIMA
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